あるお店の経営者にたずねてみました。「経営理念があれば、教えてください」。きょとんとされていました。そりゃそうですね。スポーツショップの大半が、経営理念などというものは持っていません。経営者の頭の中には、それらしきものはあるはずですが、文章にはなっていません。その証拠に100以上のスポーツショップのホームページを見てみました。すると、「理念」をうたってあるページを持っているお店は数店でした。
続いてさきのお店に聞いてみました。「どうして経営理念がないのですか?」。すると、こんな返事が返ってきました。「経営理念でメシは食えないよ」。なるほど。本当でしょうか?
そこで、参考に大企業500社の経営理念を見てみました。読んでみると分かることがあります。それは、理念は決して簡単に作られたものではない、ということです。どの理念も、本当に考えに考えて考え抜かれたあとに生み出された言葉だということが分かります。ですから、大変重い言葉なのです。
理念を持つ会社には、社員で唱和をしているところが多くあります。実は、これは大事な行動です。最初はいやいや唱和をしている社員もいます。しかし、毎日唱和を続けていると、自然とその言葉が頭に入ってくるものです。何年も続けると、暗唱さえ出来るようになります。無意識のうちに、理念が皆に刷り込まれます。すると、やがてそれが会社やお店の文化となるのです。それが、社員が働く意味にもなります。これが、経営理念の役割です。
また、もしもこの経営理念がなければ、それぞれの社員の向かう方向がバラバラになってしまいます。そうなると、お客様もお店の方向がよく分かりません。それでは、良い業績が上げられるはずはありません。つまり、経営理念はメシを食うために必要なものなのです。理念でメシを食えないというのは、間違っています。
それならば、理念を作るしかありません。どんなふうに作るといいのでしょう。むつかしくはありません。まず、あなたのお店は「どんなお店でありたいか」ということを考えます。たとえば、お客様、取引先、社員から信頼される誠実なお店とか、お客様の生活や文化の向上に奉仕し、すべてのお客様に喜んでいただける店といったことです。それを考えれば、理念作りに近づけます。
また、「社員にどんな行動をして欲しいか」ということも考えるといいです。たとえば、いつも顧客に感謝するとか、基本を忠実に守るとか、常に相手の立場を考えるとか。これらを分かりやすくまとめれば、理念ができあがります。
経営理念は会社の憲法です。公表されたものを見ると、どれも本当にそうありたいと思うことが書かれています。市販の経営理念集を参考に、自社の理念を練り直すのもいいですね。