後継者がいなくて廃業する企業は、年間7万社あるというデータがあります。中には、廃業にするには勿体無い企業も多くあることでしょう。後継者がいないというだけで、築き上げた財産を無駄にするのは惜しいことです。
しかし、後継者にふさわしい人材がいない会社は、よくあります。親の事業は継ぎたくないというお子さんもたくさんいます。そんな時、社員の中から優秀な人材を選んで社長にしよう、と考えてもおかしくはありません。
ところが、多くの場合、社員からの登用はむつかしいものです。それは、社長が財産を握っているからです。株のほとんどは社長が持っています。土地や建物も社長名義で、それを会社に貸している形が多いです。担保も借入も社長が個人保証しています。つまり、倒産したときには、社長は身ぐるみはがされてしまいます。社員の中から社長に登用しようとすれば、それらのことも一緒に引き継がなくてはなりません。
いくら優秀な人材でも、社長の持っている株を買うのは大変なことですし、個人保証をするとなると、これも大変な負担です。こんな事情から、中小企業では社員に経営権を譲るのは、簡単なことではありません。この方法は、無理な場合の方が多いと覚悟した方がよさそうです。
では、身内にも後継者がいない、社員に継いでもらうのも大変だ、ということになれば、どうしたらいいのでしょう。経営をやめれば、社員やその家族が路頭に迷ってしまいます。経営者としては、何とかして会社の事業を継続させるように考えなくてはなりません。
この問題を解決するのに良い方法があります。それは、会社を売るのです。いわゆるM&Aです。会社ごと他の企業に売りつけてしまいます。そうすれば、事業を継続させることができます。
とはいえ、あなたの周りで、そんなに簡単に会社を買ってくれるところは見つかりません。ここは一つ、M&A専門の会社に頼んでみましょう。スムーズに事が運びます。M&A専門会社は、事業を買い取ってくれる企業を探してきてくれますが、このことは社員や家族にも秘密にしておくことが大切です。情報が漏れると、M&Aが成立しなくなる恐れがあるからです。
やがて、M&A会社を通じて、いい売却先が見つかると、あなたの会社の評価次第では、大変な高額で買ってくれます。従業員もそのまま引き継いでくれます。個人保証や負債だって引き受けてくれるのです。時には、買い取ってくれる会社の役員として迎えられることだってあります。このように、M&Aは、事業も継続できて、社員も仕事が確保でき、そのうえ社長はお金を手にすることができるのです。
ただし、赤字経営の会社を買う企業はありません。よほど、事業に特別の付加価値があったり、会社の資産が多ければ別ですが、M&Aを成立させるには、事業が利益を出していることが重要な要件です。経営内容を良くしておくことは、M&Aをしやすくするポイントです。