2017年、スポーツ庁から「第2期スポーツ基本計画」が発表されました。そこには8年後のスポーツ業界の姿が提案され、「(現在の)スポーツ市場規模5.5兆円を2020年までに10兆円、2025年までに15兆円に拡大することを目指す」とあります。今の市場を3倍にするということです。基本計画の中には、そのために国として何をするかということも書かれています。業界にとってはチャンスです。
そして、2016年に発表された「スポーツ未来開拓会議中間報告」では、5.5兆円のスポーツ産業分野を5つに分けて、それぞれ2020年、2025年までの目標市場規模が提示されています。5つの分野にはスポーツ用品市場も含まれていて、以前この欄でもご紹介したように、2020年には2.9兆円、2025年には3.9兆円となると試算されています。現在の市場規模が1.7兆円ですから、「2.3倍」ですね。
しかし、この試算は妥当なのでしょうか。また、その根拠はあるのでしょうか。経済産業省の商業統計によれば、2016年のスポーツ用品小売市場規模は1兆4400億円で、10年間で全く伸びていません。また、中小スポーツ店の数は10年間で10%減っています。このような状況から見て、スポーツ庁の「2.3倍」という試算の根拠がよく分かりませんでしたので、私は直接スポーツ庁にその根拠をたずねました。すると、「国としては、スポーツ人口を増やしたり、スポーツを盛んにする環境を作っていきます。例えば、全国にスタジアムやアリーナを新設したり、スポーツツーリズムの考え方を広めたり、スポーツマネジメントの人材を育成したり、スポーツ指導者の全国配置をしたり、大学スポーツをビジネスにしたり、ということです。これらの施策をスポーツ用品業界が活用することで市場が発展するのではないでしょうか」という回答でした。
つまり、スポーツ用品業界に直接的な支援はしないけれど、その周辺ビジネスや環境を整備していくので上手に活用せよ、ということです。それならば、スポーツショップとしてはどんなことをすればいいのでしょう。私は、今スポーツショップが苦しんでいる要因は、「時流の変化に対応できていない」ことにあると思っています。ということは、「時流の変化」を知り、それに対応していけば市場が活性化していき、スポーツ庁の掲げる目標にも近づけると思うのです。
その「時流」については、スポーツ庁も「基本計画」でヒントをくれています。すでにIT業界や映像・通信業界は、その時流に沿って動き始めていますが、スポーツ用品業界はまだ動きが鈍いようです。とはいえ、今後起きる時流の変化は、もはや個店で対応できる範囲を超えています。業界が一丸となって考えるべきものでしょう。幸い、業界には組合があります。その組織を活かすのも一つの方法です。ぜひ時流の変化を知り、市場を拡大しましょう。