1970年代1980年代には、スポーツショップが次々と生まれました。1990年頃が絶頂期で、スポーツ店の数は2万店を超えていたものです。それが今では1.3万店にまで激減しています。この先、どうなっていくのでしょう。
ところが、面白いことに、私に寄せられる相談の3割は「起業」に関するものなのです。いかに業界に参入したいと思っておられる方が多いかということを表しています。例えば、こんな相談です。「ラグビー専門のネットショップを始めたい」「スポーツブランドを立ち上げて、ネットで販売したい」「現在販売中の自社ブランドで、他競技に進出したい」「プロ選手と契約して、スポーツスクール派遣会社を起こしたい」。皆さん、熱心に相談をして来られます。そして、ほとんどの方がネットを使っての起業アイデアです。
どうして、ネットに集中するのでしょうか。ネットを使えば、リスクが少ないと考えられているのかも知れません。たとえば、「設備投資が少なくて済む」「家賃があまりかからない」「人件費も抑えられる」「販売エリアは全国をターゲットにできる」「そればかりか、海外への販売もできる」「売り場スペースは無限である」「実態以上に立派な企業に見せることができる」こんなメリットを考えているのでしょう。
しかし、実際には、メリットばかりではありません。「お客様に知ってもらうのが難しい」「信頼を得られるには、時間がかかる」「お客様の顔が見えにくい」「知らないうちに在庫が増えていく」「価格競争になりやすい」「お客様とのコミュニケーションがとりにくい」。いろいろな問題が生じます。
とはいえ、私は相談に来られた方にデメリットを話すのは、後回しにしています。その前に、確認したいことがあるからです。そして、最初にこう尋ねます。1)どんな思いで、このビジネスを始められますか。2)将来、どんな企業になりたいですか。3)あなたの強みは何ですか。4)他社との差別化ポイントは何ですか。
すると、大半の方がこの質問に答えられません。今なら、あなたもこの4つの質問には答えられるはずです。しかし、お店を始められる時には、きっと答えられなかったに違いありません。起業をしようとする人は、そうなのです。自分のアイデアばかりに目が行ってしまい、どうやって商品を売るか、どうやってお客さまを開拓するか、どうやって宣伝をするかといった、目先のことにとらわれてしまいます。
実は、本当に大事なのはそこではありません。大切なのは、どんな目的で事業や商売を始めるのか、将来どんな展望を持っているか、ということです。ここを最初にはっきりとしておけば、おのずとやるべきことは見えてきます。こんな思いや展望を持った起業家が、この業界でもっともっと出てきて欲しいと思っています。そして、業界に新しい風を吹き込んで欲しいと思うのです。数十年前がそうであったように。